2011年5月9日月曜日

偽装請負と偽装委任

今回はちょっと固い話です。以前、PM関連(を含む)の仕事をしたときに労働関連の法律について勉強しました。このとき、「委任契約だろうが請負契約だろうが、客先に常駐している作業担当者が顧客から直接指示を受けてはいけない」というものがありました。当時は、単純にそういうモノだと思って深く追求はしませんでしたが、IT Proの記事に分かりやすい説明がありましたので引用して紹介します。

引用元:偽装「請負」の請負には「委任」も含まれる
最初に触れたように,「偽装請負」に「委任」は含まれないのではないか,という疑問はもっともなのですが,結論的には厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」にいう「請負」には「委任(委託)」も含まれます。

業務委任契約で客先に常駐するSEについても,この区分基準に基づいて事業の独立性が求められ,独立性がなければ偽装請負(偽装委任?)であるということになります。従って,この連載の2回目3回目で説明したことは,委任契約という形を取ったとしてもそのまま妥当します。委任契約であっても,偽装請負にならないためには独立性を確保する,あるいは実態に合わせて派遣法上の派遣として扱う等の対応が必要なのです。
つまり、民法では請負契約と委任契約は別々の概念ですが、労働者派遣法や職業安定法上の「請負」には民法の「委任」が含まれると言う事らしいです。つまり、請負契約だろうが委任契約だろうが関係ないということですね。

そこで、疑問に思ったのですが、請負(もしくは委任)作業場所に作業者が1名しかいない場合は、作業者が管理責任者を兼任することができるかどうかという事です。本来ならば、顧客 -> 管理責任者 -> 作業者と言う指示パスが存在するはずですが、作業者が管理責任者を兼任する場合は、「人」という単位に着目すると、顧客 -> 作業者という指示パスが存在する事になり、微妙にグレーゾーンになりそうです。

実際に軽くググって見ると、厚生労働省より「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に. 関する基準」 37号告示)に関する疑義応答集」(PDFです)というFAQが公開されており、質問4にその答えが出ていました。以下に引用します。
Q:
請負事業主の管理責任者が作業者を兼任する場合、管理責任者が不在になる場合も発生しますが、請負業務として問題がありますか。

A:
請負事業主の管理責任者は、請負事業主に代わって、請負作業場での作業の遂行に関する指示、請負労働者の管理、発注者との注文に関する交渉等の権限 を有しているものですが、仮に作業者を兼任して、通常は作業をしていたとしても、これらの責任も果たせるのであれば、特に問題はありません。
また、管理責任者が休暇等で不在にすることがある場合には、代理の者を選任しておき、管理責任者の代わりに権限を行使できるようにしておけば、特に問題はありません。
ただし、管理責任者が作業者を兼任しているために、当該作業の都合で、事実上は請負労働者の管理等ができないのであれば、管理責任者とはいえず、偽装請負と判断されることになります。
さらに、請負作業場に、作業者が1 人しかいない場合で当該作業者が管理責任者を兼任している場合、実態的には発注者から管理責任者への注文が、発注者から請負労働者への指揮命令となることから、偽装請負と判断されることになります。
ということで、一人で客先に常駐する場合は管理責任者を兼任すると、偽装請負として扱われてしまうことになります。請負契約で客先で仕事をする場合は、最低、2名は必要になるということですね。

実際に現場で働くSE達はあまりこういった教育を受けていないような気がします。もちろん私も受けていませんでした。労働関連の法規は結構難しいですが、指揮命令に関する事はPMだけではなく末端のSEにもリテラシーとして教育しておく必要があると思いました。